銀行は決算書のどこを見る?融資を受けやすい会社にするための決算書の見方

はじめに

会社を経営していると、資金繰りの悩みは避けて通れません。
売上が順調に伸びていても、入金までに時間がかかる業種では、手元資金が不足することがあります。建設業、製造業、卸売業などでは、売上が発生してから実際に現金が入金されるまで数か月かかることも珍しくありません。
また、事業を拡大するためには、人材採用、設備投資、広告宣伝、在庫確保、システム導入など、先に資金が必要になる場面も多くあります。
このようなとき、重要になるのが銀行融資です。
銀行から融資を受けることは、会社の成長にとって非常に大切な資金調達手段です。しかし、銀行は単に「お金が必要だから」という理由だけで融資をしてくれるわけではありません。
銀行が最も重視するのは、会社に返済能力があるかどうかです。
その返済能力を判断するために、銀行が確認する最も重要な資料が決算書です。
決算書は、税務署に提出するためだけの書類ではありません。銀行から見れば、その会社の信用力、財務体質、収益力、返済能力を判断するための重要な資料です。
本記事では、新人経営者の方にも分かりやすいように、銀行が決算書のどこを見ているのか、融資審査で重視されるポイントは何か、そして日頃からどのような決算書づくりを意識すべきかについて詳しく解説します。

決算書とは何か

一般的に「決算書」と呼ばれているものは、正式には財務諸表といいます。

財務諸表とは、会社の一定期間における経営成績や財政状態を明らかにするために作成される書類です。

代表的なものには、次のような書類があります。

・貸借対照表
・損益計算書
・株主資本等変動計算書
・キャッシュフロー計算書
・個別注記表
・勘定科目内訳明細書

この中でも、銀行融資で特に重視されるのは、貸借対照表と損益計算書です。

貸借対照表は、会社の財産状況を表す書類です。会社にどれだけの資産があり、どれだけの負債があり、最終的にどれだけの純資産が残っているのかを確認できます。

一方、損益計算書は、会社の経営成績を表す書類です。一定期間にどれだけ売上を上げ、どれだけ費用を使い、最終的にどれだけ利益が残ったのかを確認できます。

銀行は、この2つの書類を中心に、会社の安全性と収益性を見ています。

銀行が決算書を見る目的

銀行が決算書を見る目的は、突き詰めると次の一点です。
この会社は、貸したお金をきちんと返済できるのか。
銀行は、融資を行い、その元本と利息を回収することで利益を得ています。そのため、返済が滞る可能性の高い会社には、慎重にならざるを得ません。
もちろん、融資審査では経営者の人柄、事業内容、将来性、取引実績、担保、保証人なども確認されます。
しかし、最も基本となる判断材料は決算書です。
決算書には、会社の過去の経営結果が数字として表れています。銀行はその数字をもとに、今後も事業を継続できるか、返済原資を確保できるか、借入金が過大ではないかを判断します。
そのため、経営者は決算書を税理士任せにするのではなく、最低限の見方を理解しておく必要があります。

銀行が貸借対照表で見るポイント

貸借対照表は、会社の財政状態を示す書類です。

銀行がまず確認するのは、会社の純資産です。

純資産とは、資産から負債を差し引いた残りの部分です。簡単にいうと、会社にどれだけ自己資本があるかを示しています。

自己資本が厚い会社は、財務体質が安定していると判断されます。多少売上が落ち込んでも、過去に蓄積した利益や資本があれば、すぐに資金繰りが破綻する可能性は低いと見られます。

反対に、純資産が少ない会社や債務超過の会社は、銀行から厳しく見られます。

債務超過とは、会社の資産よりも負債の方が大きい状態です。つまり、会社の財産をすべて処分しても借金を返しきれない状態を意味します。

債務超過の会社に対して、銀行が新たに融資を行う場合、返済可能性について慎重に判断されます。必ず融資が受けられないというわけではありませんが、改善計画や資金繰り計画、経営者の説明力が非常に重要になります。

自己資本比率は重要な指標

貸借対照表を見るうえで重要な指標の一つが、自己資本比率です。

自己資本比率は、次の計算式で求めます。

自己資本比率 = 純資産 ÷ 総資産 × 100

自己資本比率が高いほど、会社の財務体質は安定していると見られます。

一般的には、自己資本比率が高い会社ほど、他人資本、つまり借入金などに過度に依存していないと判断されます。

ただし、自己資本比率は業種によって目安が異なります。

設備投資が多い業種、不動産を多く保有する業種、在庫を多く持つ業種では、借入金が多くなりやすいため、単純に自己資本比率だけで良し悪しを判断することはできません。

それでも、毎期赤字が続き、純資産が減少している会社や、自己資本比率が極端に低い会社は、銀行から見て注意を要する会社と判断されやすくなります。

借入金の金額と売上規模のバランス

銀行は、会社の借入金が売上規模に対して過大ではないかも確認します。

その際に使われる指標の一つが、借入金月商倍率です。

借入金月商倍率は、次の計算式で求めます。

借入金月商倍率 = 借入金総額 ÷ 月平均売上高

例えば、年間売上高が1億2,000万円の会社であれば、月平均売上高は1,000万円です。借入金総額が3,000万円であれば、借入金月商倍率は3か月となります。

一般的には、借入金が月商の3か月以内であれば比較的健全、3か月から6か月であれば注意、6か月を超えると借入負担が重いと見られやすくなります。

ただし、これも業種によって判断は異なります。

設備投資型の事業では、借入金が大きくなることがあります。一方で、固定資産をそれほど必要としないサービス業などで借入金が多い場合には、赤字補填の借入ではないか、資金繰りが悪化しているのではないかと見られることがあります。

大切なのは、借入金の金額そのものではなく、売上、利益、返済能力とのバランスです。

資産の中身も銀行は見ている

貸借対照表では、資産の金額だけでなく、その中身も重要です。

例えば、売掛金が多く計上されている場合、銀行はその売掛金が本当に回収可能なのかを確認します。

長期間回収できていない売掛金がある場合、不良債権と見られる可能性があります。

また、在庫が多い会社では、その在庫が本当に販売可能なものかも見られます。売れ残りや陳腐化した商品が多い場合、決算書上の資産価値よりも実際の価値は低いと判断されることがあります。

さらに、役員貸付金や仮払金が多い場合も注意が必要です。

会社から社長や役員に対する貸付金が多い場合、銀行からは資金管理が甘い会社と見られる可能性があります。事業のために借りた資金が、経営者個人へ流出しているのではないかと疑われることもあります。

決算書上の資産は、金額だけでなく内容が重要です。

資産の中身が健全であることは、銀行融資を受けるうえで大きな信用につながります。

銀行が損益計算書で見るポイント

損益計算書は、会社の収益力を示す書類です。

銀行は、損益計算書を通じて、その会社が本業で利益を出せているかを確認します。

損益計算書には、主に次の利益が表示されます。

・売上総利益
・営業利益
・経常利益
・税引前当期純利益
・当期純利益

この中で、銀行が特に重視するのは営業利益と経常利益です。

営業利益は、本業でどれだけ利益を出しているかを示す利益です。

売上総利益から、人件費、家賃、広告宣伝費、通信費、支払手数料などの販売費及び一般管理費を差し引いて計算されます。

営業利益が黒字であれば、本業で利益を出す力があると判断されます。

反対に、営業利益が赤字の場合、本業そのものが赤字であるため、銀行は返済原資に不安を持ちます。

経常利益は融資判断で特に重要

銀行が融資判断で特に重視する利益が、経常利益です。

経常利益は、営業利益に受取利息や雑収入などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を差し引いた利益です。

経常利益は、会社が通常の事業活動を行い、借入金の利息なども負担したうえで、どれだけ利益を残せているかを示します。

そのため、経常利益が安定して黒字であれば、銀行は「この会社は通常の経営活動で利益を出し、借入金の利息も支払えている」と判断しやすくなります。

一方で、営業利益は黒字でも、支払利息などの負担が重く、経常利益が赤字になっている場合には、借入金の負担が重い会社と見られる可能性があります。

銀行融資を受けるためには、単に売上が大きいだけでは不十分です。

売上からきちんと利益が残り、その利益から借入金を返済できることが重要です。

返済能力は利益とキャッシュフローで判断される

銀行が最終的に見ているのは、返済できる現金を生み出せているかどうかです。

会計上の利益が出ていても、現金が残っていなければ返済はできません。

例えば、売掛金の回収が遅れている場合、損益計算書では売上と利益が計上されていても、手元に現金がないことがあります。

在庫を大量に仕入れている場合も、利益が出ているように見えて、資金繰りが苦しくなることがあります。

そのため、銀行は利益だけでなく、キャッシュフローも重視します。

返済能力を見る際の簡易的な考え方として、次の計算式があります。

返済原資 = 経常利益 + 減価償却費

減価償却費は費用として計上されますが、その期に現金が出ていく支出ではありません。そのため、銀行は返済原資を考える際に、経常利益に減価償却費を加えて見ることがあります。

この返済原資が年間返済額を上回っていれば、返済能力があると判断されやすくなります。

反対に、返済原資よりも年間返済額の方が大きい場合、既存借入の返済を新たな借入で補っている可能性があり、銀行の評価は厳しくなります。

赤字決算でも説明次第で評価は変わる

赤字決算だからといって、必ず融資が受けられないわけではありません。

銀行が重視するのは、赤字の原因と今後の改善可能性です。

例えば、一時的な設備投資、人材採用、広告宣伝、新規事業の立ち上げなどによって赤字になっている場合、その理由を明確に説明できれば、一定の理解を得られることがあります。

一方で、売上減少、粗利益率の悪化、固定費の増加、資金管理の甘さなどによって赤字が続いている場合には、銀行の評価は厳しくなります。

赤字決算の場合には、次のような説明資料を準備することが重要です。

・赤字になった原因
・一時的な赤字なのか、構造的な赤字なのか
・今後どのように改善するのか
・売上回復の見込み
・経費削減の具体策
・資金繰り計画
・返済計画

銀行は、数字だけでなく、経営者が自社の状況を正しく把握しているかも見ています。

自社の問題点を把握せず、ただ「何とかなる」と説明するだけでは信用されません。

赤字の場合ほど、経営者の説明力が重要になります。

粉飾決算は絶対にしてはいけない

銀行融資を受けたいからといって、決算書を実態より良く見せる粉飾決算は絶対にしてはいけません。

架空売上を計上する、売上を前倒しする、在庫を過大に計上する、回収不能な売掛金を残す、費用を翌期に先送りするなどの行為は、金融機関からの信用を大きく失う原因になります。

一度粉飾が発覚すれば、その後の融資取引に重大な悪影響が出ます。

銀行からの信用を失うだけでなく、税務調査で問題になる可能性もあります。

大切なのは、実態に合った正しい決算書を作成したうえで、財務内容を改善していくことです。

融資に強い決算書とは、数字を無理に良く見せた決算書ではありません。

実態が正しく反映され、利益構造や資金繰りが明確で、返済能力を説明できる決算書です。

節税だけを優先しすぎると融資に不利になることがある

中小企業では、節税を意識するあまり、利益をできるだけ少なくしようとするケースがあります。

もちろん、合法的な節税は重要です。無駄な税金を払う必要はありません。

しかし、銀行融資を考える場合、利益を過度に圧縮しすぎると、融資審査では不利になることがあります。

銀行は、利益を返済原資として見ています。

毎期ほとんど利益が出ていない会社は、銀行から見ると返済能力が弱い会社と判断されやすくなります。

そのため、融資を重視する会社では、節税と利益確保のバランスが重要です。

税金を減らすことだけを目的にするのではなく、銀行から評価される決算書を作ることも経営上は大切です。

特に、今後設備投資や運転資金の借入を予定している場合には、決算前から利益予測を行い、どの程度の利益を残すべきかを検討する必要があります。

融資を受けやすい決算書を作るためのポイント

融資を受けやすい決算書を作るためには、日頃から次の点を意識することが重要です。

まず、本業の利益である営業利益を安定して黒字にすることです。

売上を増やすだけでなく、粗利益率を改善し、固定費を適正に管理することが大切です。

次に、借入金を売上規模や利益水準に見合った範囲に抑えることです。

借入金が過大になると、毎月の返済負担が重くなり、資金繰りを圧迫します。

また、売掛金や在庫を適正に管理することも重要です。

売掛金の回収が遅れれば、利益が出ていても資金繰りは悪化します。在庫が過大になれば、資金が寝てしまい、手元資金が不足します。

さらに、役員貸付金や仮払金など、銀行から見て不透明に見える科目を増やさないことも大切です。

これらの勘定科目が多いと、会社の資金管理に問題があると見られる可能性があります。

経営者は決算書を銀行目線で説明できるようにする

銀行融資では、決算書の数字そのものも重要ですが、それを経営者が説明できるかどうかも重要です。

なぜ売上が増えたのか。
なぜ利益率が下がったのか。
なぜ在庫が増えているのか。
なぜ借入金が増えたのか。
今後どのように利益を改善するのか。
返済原資はどこから生まれるのか。

これらを経営者自身が説明できる会社は、銀行からの信頼を得やすくなります。

逆に、すべてを税理士任せにしていて、経営者が自社の数字を理解していない場合、銀行は不安を感じます。

決算書は、過去の結果を示すだけでなく、今後の経営判断の材料でもあります。

経営者自身が決算書を読み、銀行目線で説明できるようになることが、融資を受けやすい会社づくりにつながります。

おわりに

銀行が融資判断で決算書を見る最大の目的は、会社に返済能力があるかどうかを確認することです。

貸借対照表では、純資産の状況、自己資本比率、借入金の水準、資産の中身が確認されます。

損益計算書では、営業利益や経常利益を中心に、本業で利益を出せているか、借入金の利息を負担したうえで利益が残っているかが見られます。

また、利益だけでなく、実際に返済できる現金を生み出せているかというキャッシュフローの視点も重要です。

融資を受けやすい決算書を作るためには、粉飾や見せかけの数字ではなく、実態に合った正しい会計処理を行い、財務体質を改善していくことが大切です。

節税だけを優先するのではなく、銀行から見て信頼される決算書を作ることも、経営者にとって重要な仕事です。

会社の成長には資金が必要です。そして、必要なときに銀行から資金調達できる会社であるためには、日頃から決算書の内容を整え、銀行に説明できる経営管理を行う必要があります。

決算書は、税務申告のためだけの書類ではありません。

銀行から信用を得るための資料であり、経営者が自社の現状を把握するための重要な資料です。

新人経営者の方は、まず貸借対照表と損益計算書の基本を理解し、自社の財務状態と収益力を説明できるようにしておきましょう。

資金繰り、銀行融資、決算対策に不安がある場合には、早めに税理士へ相談することをおすすめします。決算が終わってから慌てるのではなく、決算前から数字を確認し、利益予測、納税予測、資金繰り計画を立てることで、銀行から評価される決算書づくりが可能になります。

銀行目線を意識した決算書を作ることは、会社の信用力を高め、安定した経営を実現するための第一歩です。

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