建設業で利益が残らない原因とは?売上より粗利を重視すべき理由を税理士が解説

はじめに

建設業・建築業を営む経営者の方から、よくご相談をいただく内容の一つに、「売上はあるのに、なぜか利益が残らない」というものがあります。

工事件数は増えている。
売上高も前年より伸びている。
忙しさも確実に増している。

それにもかかわらず、決算書を見ると利益がほとんど残っていない、資金繰りにも余裕がないというケースは少なくありません。

このような場合に、まず確認すべきなのは「売上高」ではなく「粗利」です。

建設業・建築業は、材料費・外注費・労務費などの原価が大きくなりやすい業種です。そのため、単純に売上を増やせば利益が増えるとは限りません。むしろ、利益率の低い工事を多く受注してしまうと、忙しいだけでお金が残らない経営体質になってしまう可能性があります。

本記事では、建設業・建築業において、なぜ売上より粗利を重視すべきなのか、また粗利を改善するためにどのような管理が必要なのかを、税理士の視点から解説します。

建設業は粗利率が低く見えやすい業種

一般的に、建設業・建築業は他業種と比較すると粗利率が低く見えやすい業種です。

たとえば、飲食業では食材原価が売上の30%程度で、粗利率が70%前後になることもあります。一方、建設業では材料費や外注費が大きく、粗利率が20%前後になるケースも珍しくありません。

この数字だけを見ると、建設業は利益が出にくい業種のように感じるかもしれません。

しかし、重要なのは「粗利率」だけではありません。
「粗利額」も同時に見る必要があります。

たとえば、100万円の工事で原価が80万円であれば、粗利は20万円です。粗利率は20%ですが、1件の工事で20万円の粗利を確保できます。

一方、飲食店で客単価1,000円、原価300円の場合、粗利は700円です。粗利率は70%と高く見えますが、1件あたりの粗利額は700円です。

会社を維持するためには、人件費、社会保険料、事務所家賃、車両費、リース料、保険料、水道光熱費、通信費など、毎月必ず発生する固定費があります。

会社経営においては、

粗利 > 固定費

となれば利益が残ります。

反対に、

粗利 < 固定費

となれば、どれだけ売上があっても赤字になります。

つまり、建設業では「売上がいくらあるか」よりも、「その売上からいくら粗利が残るのか」を正確に把握することが極めて重要です。

建設業は粗利率1%の改善が大きな利益差になる

建設業・建築業の特徴は、1件あたりの工事金額が大きいことです。

この特徴は、資金繰りや原価管理の難しさにつながる一方で、粗利率を少し改善するだけで利益額が大きく変わるというメリットもあります。

たとえば、年間売上が10億円の建設会社があるとします。

この会社が粗利率を1%改善できた場合、

10億円 × 1% = 1,000万円

の利益改善につながります。

たった1%と思われるかもしれませんが、建設業では売上規模が大きいため、その1%が数百万円、数千万円単位の利益差になることがあります。

このため、建設業の経営改善では、単に「売上を増やす」ことだけを考えるのではなく、「同じ売上でも、より多くの粗利を残す」ための管理が重要になります。

利益が残る会社は工事ごとの粗利を管理している

利益率が高い建設会社には、共通する特徴があります。

それは、工事ごとの粗利管理を徹底していることです。

具体的には、各工事について次のような項目を管理します。

・請負金額
・材料費
・外注費
・労務費
・現場経費
・予定粗利
・実際粗利
・予定と実績の差額

このような管理を行うことで、工事を受注する前の段階で「この工事はいくら利益が残るのか」を把握できます。

また、工事完了後に予定粗利と実際粗利を比較することで、どこで利益が減ったのかを検証できます。

たとえば、見積時点では粗利が取れる予定だったにもかかわらず、実際には利益が少なかった場合、原因としては次のようなものが考えられます。

・材料費が想定より高騰した
・外注費の見積りが甘かった
・追加工事の請求ができていなかった
・現場管理に時間がかかり過ぎた
・値引き交渉により利益が削られた

この原因を把握しないまま次の工事を受注してしまうと、同じ失敗を繰り返すことになります。

一方、工事ごとの粗利管理を行っている会社は、利益が出る工事と利益が出にくい工事を見極めることができます。その結果、受注すべき工事、慎重に判断すべき工事、断るべき工事の判断がしやすくなります。

売上10億円より粗利が残る5億円を目指すべき場合もある

建設業では、売上規模を大きくすることが必ずしも正解とは限りません。

たとえば、次の2社を比較してみます。

A社:売上10億円、粗利率20%
B社:売上5億円、粗利率40%

この場合、どちらも粗利額は2億円です。

しかし、利益が残りやすいのは、必ずしも売上が大きいA社ではありません。

売上規模が大きくなると、従業員数、事務所規模、車両、管理部門、借入金、保険料などの固定費も増えやすくなります。また、工事件数が増えることで、現場管理や資金繰りの負担も大きくなります。

一方、売上規模が半分でも粗利率が高い会社は、少ない人員で効率よく利益を出せる可能性があります。

建設業においては、「売上が大きい会社」よりも、「粗利がしっかり残り、固定費を抑えられている会社」の方が、財務的に強い会社であることも少なくありません。

粗利改善のために必要な3つの視点

建設業・建築業で粗利を改善するためには、次の3つの視点が重要です。

まず1つ目は、見積り段階で必要な粗利を確保することです。

「とりあえず受注する」「競合に負けないために値下げする」という判断を続けると、受注は増えても利益は残りません。最低限必要な粗利額を決めたうえで、請負金額を設定することが重要です。

2つ目は、原価の内訳を正確に把握することです。

材料費、外注費、労務費、現場経費を工事ごとに分けて管理しなければ、どの工事で利益が出ているのか分かりません。会計処理上も、建設業では未成工事支出金や完成工事原価など、業種特有の管理が必要になります。

3つ目は、完成後に必ず振り返りを行うことです。

予定粗利と実際粗利を比較し、差額の原因を分析することで、次回以降の見積り精度が高まります。利益が出る会社ほど、この振り返りを継続しています。

おわりに

建設業・建築業では、売上高だけを追いかける経営には注意が必要です。

売上が増えても、粗利が残らなければ会社にお金は残りません。さらに、固定費や借入返済が増えれば、忙しいにもかかわらず資金繰りが苦しくなる可能性もあります。

大切なのは、売上ではなく粗利を管理することです。

工事ごとの粗利を把握し、見積り段階で利益を確保し、完成後に予定と実績を比較する。この積み重ねが、建設業の利益体質を大きく変えていきます。

弊所では、福岡を中心に、熊本など九州エリアの建設業・建築業の法人様から、会計・税務・資金繰り・原価管理に関するご相談を承っております。

「売上はあるのに利益が残らない」
「工事ごとの利益を正確に把握できていない」
「建設業に合った会計管理を整えたい」
「粗利率を改善し、会社にお金が残る体制を作りたい」

このようなお悩みがある場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

弊所では、来所またはオンラインによる初回無料相談を実施しております。建設業・建築業の経営改善、原価管理、税務会計体制の見直しをご検討の方は、お気軽にご相談ください。

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