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固定資産税の勘定科目は「租税公課」|3つの経費計上タイミング
事業用の土地や建物、機械装置などを所有している法人にとって、固定資産税の納付は避けて通れない業務です。納税通知書が届いた際、多くの経理担当者が最初に悩むのが「どの勘定科目で、いつ経費にすれば良いのか」という点ではないでしょうか。
結論から申し上げますと、固定資産税の勘定科目は「租税公課」で処理するのが一般的です。これは、国や地方公共団体に納める税金や公的な負担金を経費として計上するための勘定科目であり、固定資産税の他にも収入印紙代や不動産取得税などが含まれます。
ただし、会計処理の選択肢は一つではありません。より重要なのは、「いつ費用として計上するか」というタイミングです。税務上、以下の3つのタイミングでの損金算入(経費計上)が認められています。
- ① 市町村から納税通知書が届いた日(賦課決定日)
- ② 各納期の開始日
- ③ 実際に納付した日
どの方法を選択しても税務上は問題ありませんが、一度採用した処理方法は、特別な理由がない限り継続して適用することが求められます(継続性の原則)。それぞれの方法にはメリット・デメリットがあり、企業の経理方針や決算業務の進め方によって最適な選択は異なります。例えば、期末の利益予測の精度を高め、計画的な節税対策を行いたいのであれば、賦課決定日に全額を未払計上する方法が合理的です。まずはこの3つの選択肢があるという全体像を把握し、自社に合った方法を見つけていきましょう。
どの方法を選ぶべき?損金算入時期の考え方と選択のポイント
固定資産税をいつ損金算入するかは、企業の任意で選択できます。これは、法人税法基本通達9-5-1において、固定資産税のような「賦課課税方式」の租税は、「その賦課決定のあった日の属する事業年度」の損金に算入することが原則とされつつ、各納期の開始日や実際に納付した日に損金算入することも認められているためです。
では、自社にとってどの方法が最適なのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットを比較し、選択のポイントを解説します。

| 損金算入のタイミング | メリット | デメリット | こんな企業におすすめ |
|---|---|---|---|
| ① 賦課決定日 | ・年税額が確定した時点で費用計上するため、期間損益を正確に把握できる・決算日前に費用が確定し、利益予測や節税対策が立てやすい | ・未払金を計上し、納付時に消し込む管理が必要になる・資金の支出と費用の計上時期がずれる | ・正確な月次決算を行いたい企業・計画的な経営管理を重視する企業 |
| ② 各納期の開始日 | ・納付すべき税額が具体的に確定したタイミングで費用計上できる | ・実務上、この方法を採用するメリットは少なく、管理が煩雑になりがち | – |
| ③ 実際に納付した日 | ・仕訳がシンプルで、経理処理が最も簡単・現金の支出と費用の計上タイミングが一致する | ・納付が翌期にまたがる場合、当期の費用として計上されないため、期間損益が不正確になる・決算間際に利益が確定するため、節税対策が後手に回りやすい | ・経理業務の簡素化を最優先したい企業・設立間もない小規模な企業 |
どの方法を選択するかは、自社の経理体制や経営管理のレベルに合わせて判断することが重要です。一度決めた方法は継続して適用する必要があるため、安易な変更は認められません。将来的な事業拡大なども見据え、慎重に選択しましょう。
【仕訳例】固定資産税の具体的な会計処理をパターン別に解説
法人が固定資産税を会計処理する場合、勘定科目は「租税公課」を用いるのが一般的です。もちろん、管理会計上の目的で他の科目名(例:「固定資産税」)を独自に設定することも可能ですが、税務申告書を作成する上では、最終的に租税公課として集計されることになります。
固定資産税の仕訳は、前述の通り「いつ経費処理するか」によって方法が異なります。ここでは、年間税額120万円(各納期で30万円ずつ納付)と仮定して、具体的な仕訳例を3つのパターンで見ていきましょう。
1. 納付した都度、費用計上する場合(納付日基準)
最もシンプルなのが、実際に税金を納付した日に費用として計上する方法です。現金主義的な考え方で、経理処理の手間を最小限に抑えたい場合に適しています。例えば、自動車税など他の税金もこの基準で処理している企業が多いでしょう。
【一括で全額納付した場合】
第1期の納付期限に、年税額120万円を全額納付した場合の仕訳です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 租税公課 1,200,000円 | 現金預金 1,200,000円 |
【4回に分割して納付した場合】
各納期(例:6月、9月、12月、翌年2月)に30万円ずつ納付する際の仕訳です。納付の都度、同じ仕訳を計上します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 租税公課 300,000円 | 現金預金 300,000円 |
この方法のデメリットは、決算期をまたいで納付する場合、当期に対応する税額の一部が翌期の費用になってしまい、正確な期間損益を把握できない点です。
2. 納税通知書が届いた日に全額費用計上する場合(賦課決定日基準)
より正確な期間損益計算を重視する場合に採用されるのが、納税通知書が届いた日(賦課決定日)に年税額の全額を費用計上する方法です。発生主義の会計原則に近く、月次決算の精度を高めたい企業に適しています。
【納税通知書が届いた日の仕訳】
納税通知書により年税額120万円が確定した時点で、全額を費用(租税公課)として計上し、同額を負債(未払金)として処理します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 租税公課 1,200,000円 | 未払金 1,200,000円 |
【各納期に納付した日の仕訳】
その後、各納期に30万円を納付する都度、計上していた未払金を取り崩します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未払金 300,000円 | 現金預金 300,000円 |
この方法により、実際の納付時期にかかわらず、その事業年度に対応する固定資産税の全額を費用として計上できます。これにより、法人決算を締める前に正確な利益を把握でき、効果的な節税対策を検討する時間を確保しやすくなります。
3. 決算時に未払分のみ費用計上する場合
実務上、上記の2つを組み合わせた折衷案もよく用いられます。期中は納付の都度費用を計上し(納付日基準)、決算整理仕訳で当期に帰属する未払分を追加で費用計上する方法です。
例えば、3月決算の法人が、納税通知書(年税額120万円)を受け取り、第3期分まで(合計90万円)は納付済み、第4期分(30万円、納期は翌年2月だが未納)の状況を考えます。期中の仕訳は納付日基準で行っているため、決算時点では90万円しか費用計上されていません。
【決算整理仕訳】
決算日に、未納付の第4期分30万円を費用として追加計上します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 租税公課 300,000円 | 未払金 300,000円 |
【翌期首の再振替仕訳】
そして、翌期の期首にこの決算整理仕訳の逆仕訳(再振替仕訳)を行います。これにより、翌期に第4期分を支払った際に通常通り「租税公課/現金預金」として仕訳しても、二重計上されるのを防ぎます。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 未払金 300,000円 | 租税公課 300,000円 |
この方法は、日々の経理業務の簡便性を保ちつつ、決算では正確な期間損益計算を実現できるため、多くの企業にとって実用的な選択肢と言えるでしょう。月次会計の精度と業務効率のバランスを取りたい場合に適しています。
経理担当者が迷いやすい3つの応用論点
基本的な仕訳を理解した上で、実務ではさらに判断に迷うケースが出てきます。ここでは、特に経理担当者がつまずきやすい3つの応用的な論点について、専門家の視点から明確な指針を示します。

1. 事業用と私用が混在する場合の「家事按分」
代表者の自宅を事務所として登記している法人や、個人事業主から法人成りした直後などで、建物や土地の所有者が個人名義のまま事業に使っているケースがあります。個人事業主の場合は、固定資産税のうち事業で使用している部分だけを必要経費に算入でき、この計算を「家事按分」と呼びます。一方、法人が代表者等の個人名義資産を事業で使用する場合は、固定資産税を法人の租税公課として按分計上するのではなく、賃貸借契約に基づく賃借料等として処理するか、個人負担分を役員貸付金・役員給与等として処理するかを検討します。
按分の際には、客観的で合理的な基準を用いることが重要です。税務調査で指摘を受けないためにも、以下のような基準で事業利用割合を算出します。
- 床面積の割合:自宅兼事務所の場合、総床面積に対する事業用スペース(事務所部屋、倉庫など)の面積の割合で按分する方法が最も一般的です。
- 使用時間の割合:特定の部屋を事業と私用で時間によって使い分けている場合などは、1日のうち事業で使用している時間の割合で按分することも考えられます。
【計算例と仕訳例】
年間の固定資産税が20万円、総床面積100㎡のうち事業用スペースが40㎡(事業割合40%)の場合。
- 経費計上額:200,000円 × 40% = 80,000円
- 私用部分:200,000円 – 80,000円 = 120,000円
この場合、法人が個人の税金を立て替えて支払ったと考え、私用部分は「立替金」や「役員貸付金」として処理します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 地代家賃 80,000円 役員貸付金 120,000円 | 現金預金 200,000円 |
按分計算の根拠となる図面や、使用時間を記録した業務日報などは、税務調査に備えて必ず保管しておくようにしてください。これは社用車の私的利用がある場合の自動車税の按分などでも同様の考え方です。
2. 不動産売買時の「固定資産税精算金」の処理
年度の途中で事業用の不動産を売買した際には、売主と買主の間でその年度の固定資産税を日割りで精算するのが商慣習となっています。この時に授受される「固定資産税精算金」は、税金の納付そのものではなく、不動産の売買代金の一部として扱われる点に注意が必要です。

したがって、この精算金の勘定科目は「租税公課」ではありません。
- 買主側の処理:支払った精算金は、不動産の取得価額に含めます。土地と建物に分けて精算している場合は、それぞれ「土地」「建物」の勘定科目に上乗せします。
- 売主側の処理:受け取った精算金は、不動産の譲渡収入に含めます。仕訳上は「固定資産売却益」または「固定資産売却損」を計算する際に考慮されます。
【買主側の仕訳例】
建物5,000万円、土地3,000万円の不動産を購入し、固定資産税精算金として50万円(建物分20万円、土地分30万円)を支払った場合。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 建物 50,200,000円 土地 30,300,000円 | 現金預金 80,500,000円 |
さらに重要なポイントとして、固定資産税精算金は不動産の譲渡対価の一部として扱われるため、売主が消費税の課税事業者として事業用建物を譲渡する場合、建物部分に対応する精算金は消費税の課税対象となります(土地部分は非課税)。インボイス制度下で仕入税額控除を行う場合は、売主が適格請求書発行事業者であるか、契約書・請求書で土地・建物および消費税額が合理的に区分されているかを確認しましょう。
3. 「償却資産申告」との違いと注意点
経理担当者が混同しやすいのが、「固定資産税(土地・家屋)」と「固定資産税(償却資産)」の違いです。これらは同じ固定資産税という名称ですが、課税の仕組みが根本的に異なります。
- 固定資産税(土地・家屋):登記情報などに基づき、市町村が税額を計算して通知してくる「賦課課税方式」です。納税者は通知された金額を納付します。
- 固定資産税(償却資産):事業用の機械、器具備品、構築物などの償却資産について、納税者が毎年1月1日時点の所有状況を市町村等に申告し、その申告や調査に基づいて市町村等が価格や税額を決定して納税通知書を交付する「賦課課税方式」です。申告期限は原則として1月31日です。
この違いを理解していないと、償却資産の申告漏れが発生するリスクがあります。特に注意すべきは、法人税の計算と償却資産税の計算では、資産の評価方法や特例の適用が異なる場合がある点です。
例えば、租税特別措置法上の「中小企業者等の少額減価償却資産の特例」により、令和8年4月1日以後に取得等する資産は40万円未満、同日前に取得等した資産は30万円未満について、一定の要件のもと取得時に全額損金算入できますが、償却資産税の申告対象からは原則として除外されません。この資産を申告から漏らしてしまうと、本来納めるべき税金を納付していないことになり、後日、過年度分と延滞金を合わせて追徴される可能性があります。建設中の資産を管理する建設仮勘定なども、完成・事業供用開始後は申告対象となるため注意が必要です。
適切な資産管理と税務申告のためには、この二つの制度の違いを正しく理解しておくことが不可欠です。
判断に迷ったら税理士へ|相談すべきケースと準備すべきこと
固定資産税の会計処理は、基本的なルールさえ押さえればご自身で対応可能な部分も多いです。しかし、中には専門的な判断を要するケースや、誤った処理が将来の税務リスクに繋がりかねない場面も存在します。
【自己判断で進めても良いケース】
- 既に顧問税理士と経理処理の方針(損金算入時期など)が決まっており、それに従って毎年同様の処理を行う場合。
- 事業専用の資産にかかる固定資産税で、按分計算や売買などの特殊な取引がない場合。
【税理士に相談すべきケース】
- 初めて固定資産税の処理を行うため、どの損金算入時期を選択すべきか迷っている場合。
- 自宅兼事務所など、家事按分の計算が必要で、合理的な按分比率を決定したい場合。
- 年度の途中で不動産を売買し、固定資産税精算金の処理に不安がある場合。
- 償却資産の申告対象となる資産がどれか、申告内容が正しいかを確認したい場合。
税理士に相談する際は、以下の資料を事前に準備しておくと、話がスムーズに進みます。
- 固定資産税・都市計画税 納税通知書(課税明細書を含む)
- 不動産売買契約書(不動産を売買した場合)
- 固定資産台帳
- 過去の法人税申告書
固定資産税の処理は、一度ルールを決めてしまえば毎年の業務は比較的シンプルです。しかし、その最初のルール作りや、イレギュラーな取引が発生した際の判断は、会社の財務状況や税務リスクに直接影響します。少しでも不安や疑問があれば、専門家の意見を聞くことが賢明な判断と言えるでしょう。福岡市博多区にある久保税理士事務所では、初回のご相談は無料で承っておりますので、お気軽にご連絡ください。

福岡県を拠点に、法人・個人を問わず中小企業経営者の皆様をサポートする税理士事務所です。特に「法人決算」「顧問契約」「開業支援」「節税対策」については豊富な実績とノウハウがございます。
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